痔は、一度も経験したことが無いという人がめずらしいと言われるほど多い病気で、
「十人九痔」と言われます。

痔には、いぼ痔、切れ痔、あな痔、脱肛などの種類がありますが、
最も多いのは、肛門周辺の静脈の血行が悪化して腫れものができる、いぼ痔です。

血行が悪くなりやすい仕事、例えば長時間座って仕事をする人(タクシー運転手や事務仕事)に多く、また、便秘がちな人にも多いです。
そのため、予防や悪化防止するには、食生活(便秘防止)、運動、
ウォシュレットなどによる肛門部の清潔保持などが大切です。

食事では、便通を良くする、食物繊維を多く含む野菜、海藻類を多く食べ、
血行を悪くする、脂っこい物や甘い物を少なくし、辛い刺激物も避けてください。

これに加えて、漢方薬を服用するとよく効きます。
痔に最もよく使う漢方薬が、乙字湯(おつじとう)です。
これは江戸時代に考えられた薬で、
武士が戦場で長時間馬に乗って、痔を患った時の治療薬として、
薬の名前を覚えやすいように、「乙」という字の薬方を服用するように指導したと言われています。
血中の余分な水や熱を取りながら、血の巡りを良くし、便秘も改善する、
初期の軽い痔全般に使える薬です。

肛門の灼熱感、疼痛、出血がある時は、槐角丸(かいかくがん)がよく効きます。
熱を冷まし、止血、止痛作用が強く、これも痔によく使う薬です。

脱肛の場合は、「気」の不足によって起こるため、
気を補う、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)をよく使います。
気が不足している方の、慢性的な痔にも使います。

切れ痔の場合は、紫雲膏(しうんこう)という軟膏を患部に塗るだけで治ることが多いです。
これは、やけどやしもやけにもよく効く薬で、品質の良い物は、
プーンとゴマ油のよい香りがします。

痔は、ほうっておいて進行すると治りにくくなり、面倒なことになってしまうので、
食事と漢方でしっかり治しましょう。