「よくかむことはガンの予防になる」と言われます。
これは、唾液のペルオキシダーゼという酵素のおかげです。
さまざまな発ガン物質を唾液に30秒間つけると、発ガン作用が大幅に低下します。
唾液には、毒消し作用があるのです。
よくかむことで、唾液の分泌が盛んになり、ガンの予防につながるのです。

また、よく、動物はけがをすると、傷口をなめます。
これは唾液に傷口を消毒する成分が含まれているからです。
たとえばリゾチーム、これは溶菌酵素ともいわれ、風邪薬にも含まれています。

他にも、スムーズに食べ物を飲み込めるのも、味を感じることができるのも、
唾液のおかげです。虫歯予防効果もあります。

近年、唾液の量が少なくなったり、唾液がほとんど出ない病気、
ドライマウス(口腔乾燥症)やシェーグレン症候群の方が非常に増えています。
原因はさまざまで、ストレス、加齢、生活習慣、口呼吸、
薬の副作用(血圧を下げる薬や睡眠薬、抗うつ剤など)などでも起こります。

食事とドライマウスの関係は特に深く、やわらかい食事が増えた結果、
かむ回数が少なくなり、唾液の分泌が少なくなったことも原因の一つに挙げられます。
朝食は唾液の出やすい和食がおすすめです。
つまり、飲み物で流し込めるパンよりも、唾液と混ぜないと飲み込みにくいお米が良いです。
唾液が出にくい人は、食生活を見直すことによって改善することが多いです。

それともう一つ、唾液を強制的に出す方法があります。
それが前々々回にお話した「あいうべ体操」です。
ぜひ一度やってみてください。唾液がじわーっと出てきます。

昔から「唾液の多いお年寄りは長寿を得る」
「よだれの多い赤ちゃんは丈夫に育つ」と言われます。
唾液が多いということは、防衛力も強いということです。
唾液の量は、健康状態を示すバロメーターの一つなのです。
(「口を閉じれば病気にならない」今井一彰著より)